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Don’t Trust Over Fourty.

CC : moojie

INTERVIEW(第4回):2ndアルバム全曲コメント

2016.08.01:Yoshiko Nakano

★では曲それぞれについて伺います。1曲目の「人形姫」は、タイトルからしてハマリオらしいヒネりがありますが。

オリ:このアルバムを作るにあたって1番最初に作った曲で、ハマには言わなかったけど、曲を作る前からアルバムの1曲目にするつもりで作った。その後に1曲目に合う曲が出ててきたら、そっちにしたと思うけど、結局最終的にこれが生き残った。

ハマ:なんかこの曲はギターを苦労したなぁ。どう弾いても合うような自由さがある曲だし。デモのアレンジはもっとシンプルなライブ編成になってたんだけど、音源って事で、音的には色々遊んでる。ミックスでエフェクティブな処理をやってもらったり、珍しくギターシンセを使ったりした。ギターを録った後にオリが編集で新しいリフに作り変えたりした部分もある。

オリ:歌詞的には、現実的な話とおとぎ話が交錯して一つのドラマになってるってとこがミソかな。Aメロだけ一人称が女性になってるんだけど、これは自分が歌わないからいいやと思って、珍しくやってみた。

★「ダークサイドマン」は、ガレージ・ロックというかパンクというか、清々しく毒づいてる感じが印象的ですね。

ハマ:これは最初1stに入れようとしてて、リズム録りまで終わってたんだけど、土壇場で入れるのをやめた曲。2ndでも暗に葬ろうとしてたんだけど、オリに「あれ復活させよう」って言われて、改めて聞き直したら良かった。で、全部録音し直したんだよね。

オリ:1stだと埋もれる感じの曲だったから入れるのを見送ったんだけど、今回のアルバムに不足してる曲調だったから。実はベースは録り直してないけどね(笑)。いや、録り直したんだけど前のテイクの方が良かったからそっちを採用した。再録の最中にオルガン入れようって事になって、やってみたら本当にいい感じになったね。

★「ミュージック」はサウンドも歌詞もストレートですね。

オリ:シンプルな青春感ある曲を作ろうと思って。俺こういうオンコード得意なんだよ。

ハマ:「中年の主張」みたいな曲だね。ブリティッシュなコード進行の8ビートなんだけど、俺は聴いた時に何故かアメリカンロックを感じて、で、ブルース・スプリングスティーンの気分でギターを弾いて歌った(笑)。

オリ:こういう歌詞は俺らみたいな年齢とスタンスのバンドにしか出来ないし、見るからに説教臭そうなハマが歌うから説得力があるんだよ。

ハマ:うるさいよ(笑)。

オリ:音楽やってる人だけじゃなくて、全てのクリエイターに共通する内容の歌だよ。

★ついに来ましたね、マンチェ感のある「YOU ARE MINE」。

ハマ:もともとは、いわゆるマーク・ボランとかあの辺の所謂ゆるいグラムみたいなアレンジだったんだけど、オリが初期コンセプトに忠実な方向にリアレンジして。

オリ:ってか俺、グラムって良く知らないの。だから結局得意な方向に振ったという。これも1stに入れようか悩んで、入れなかったやつ。

ハマ:その頃つけてた歌詞は、もうちょっとヒネりがなくて。だから、イケメンでもヤサオトコでもない40代のおっさんが歌ったら気持ち悪いだけだろうと思って躊躇したんだよ。

オリ:で、結局その気持ち悪さを逆手にとって、より気持ち悪い内容に修正した。ここまで来れば諦めがつくだろうと(笑)。

ハマ:まあ諦めたね(笑)。

★ユーモア溢れる「マッチ売り」は、まさにヒネクレポップって感じですね。

ハマ:この曲も元々グラムっぽいイメージで作ったんだけど、ほら、このバンドでグラムのエッセンスを出すとさあ…

オリ:ベーシストがそれを削り取るからな(笑)。

ハマ:(笑)。それで聴いての通り、XTCフレーバーなアレンジで生まれ変わったわけよ。個人的にこの曲は一時期ヘビーローテーションしてたぐらい好きだね。歌詞もすごく良いしね。

オリ:グラム感はともかく、俺は基本的にシャッフルが好きじゃないんだよ。なんか陽気な感じのところが(笑)。だからメロディーは同じでもコード進行はストイックになるようにとかね。歌詞はハマが最初に作ったのがあって、曲調も含め全体的にシティポップスにしか聞こえなかったから、シチュエーションと所々のフレーズは使いまわして、エキセントリックな要素をコツコツ追加してった。

ハマ:俺が最初に書いた「マカロニほうれん荘」(コミック第7巻62ページ)からのインスパイア部分が生き残ってて嬉しかったよ。

オリ:俺がインスパイアされたのは「北酒場」だけど(笑)。

★「炎上ゲーム」はファンキーな曲調に、毒気のある歌詞がインパクトありますね。

ハマ:俺、このベースが好きなんだよ。いいグルーブ。基本、キーボードのアレンジは俺の役割なんだけど、オリがデモで入れてたクラビが、ベースラインと上手く絡みすぎてて、変えようがなかったから、結局そのまんまにした。曲の根っこがファンクなんで、ギターは安直にワウで行こうと。クラビのカウンターになってるギターのリフにはチカラコブを入れたね。それにしてもこんな歌詞は聞いた事がない(笑)。

オリ:ハマリオの歌詞世界に登場するキャラクターは、フリーキーな奴が多いんだけど、時々そういう人を一人称に据えてたりする。加害者目線の内容になってるとかね。聞く人の共感を得るってだけが歌詞の表現方法じゃなくて、共感できない内容でも、その書いてある事に対して聞く人がどう感じるかも含めての表現方法ってのがあるんだよ。

★「天国と地獄」では今回のアルバムで唯一、ピーター・フック風ベースが聴けますね。

オリ:まぁ1曲ぐらいやっとかないとね。

ハマ:これはね、80年代のデヴィッド・ボウイを意識した曲で、そもそも普通に生ベースで想定してたんだけど「あ、今回ピーター・フックやるの忘れてた」というオリの意見でシンセベースに変更した。歌詞も一応全部書いて送ったんだけど、オリから返って来た時には、サビ以外は全部変わってた(笑)。

オリ:歌詞書く時に見た邦画が曲調にバチっと合ったから、そのイメージで加筆した。それが何の映画かはどうでもいい事だけど、サイトの歌詞ページの背景画像で気づく人もいるんじゃないかな。

★「紫陽花」は、00年代のニュー・ウェーブバンドのようなサウンドの叙情的な曲ですね。

オリ:例えが上手いな(笑)。

ハマ:切ない恋の歌だね。女性はともかく、大人の男性なら共感できる部分があるんじゃないかね。歌詞にインスパイアされて、ギターサウンドも梅雨の感じで、ちょっとキラキラ感を意識した。

オリ:曲を作った時はもっとシューゲイザーな感じにする予定だったんだけど、デモにして行く過程で、ベースがうねうねする方向に転んだら、どんどん別物になってって、色んなエッセンスが混じったものになった。最初はピンと来なくても、ある日突然好きになるような曲って感じかな。

★「花火」はビートルズエッセンスと言うか、正直、ハマリオからこういうのが出るというのは意外でした。

オリ:そうなんだよ。ガラじゃないから、この曲やるかどうしようか悩んだんだよ。曲ができてから、とりあえずブリットポップの方向でアレンジを詰めてったんだけど、気づいたらなんかトリッキーになり過ぎちゃって、ちょっとハマリオにしてはゴテゴテしてるかなと思って。

ハマ:デモの段階で、オリから珍しく「この曲どうかなぁ?」みたいな相談が来たんだけど、俺はぜんぜんOKだと思った。個人的にはそのうちデュークス・オブ・ストラトスフィアみたいなアルバム作りたい野望もあるし。

オリ:で、そのゴテゴテ感をどうにかこうにか取り除いてって、一応ライブでも出来るだろうってところまですっきりさせたのがこの最終形。実はハマリオ唯一のフェードアウト。

ハマ:ギターはとにかくシンプルに弾いてくれって事だったんでバッキングに徹してる。エンディングのソロでは遊んでるけどね。ドラマチックな曲の展開と、歌詞の風景描写が絶妙にマッチした名曲です。

★アルバムの最後を飾る「遠距離ウィークエンド」は、やけに爽やかなポップチューンですね。

オリ:「花火」のフェードアウトで終わらないというね(笑)。

ハマ:この曲は、元々モダン・フラワー・チルドレンでやってたんだけど、ちょっとポップ過ぎて扱いに困ってた所があったんで、ハマリオに持ち込んだ。

オリ:元曲のイメージが強かったから、ちょっと取っ掛かりに苦労したけど、最終的にはこっちが原曲なんじゃないかと思うレベルに出来たと思う。前から80年代っぽい曲だなと思ってたから、歌詞もそれっぽいものを書いて、さらに所々を当時のヒット曲からの引用に差し替えるという遊びをしてみた。

ハマ:オリが熱海で歌詞を書きあげたと言っていた(笑)。同世代の人なら気づくオマージュがふんだんに散りばめられてるよね。ちょっと聴いてもわからないんだけど、結構面倒くさい音符運びのメロディーをしてる曲で、いざ自分で歌うとなったら嫌気がさしたんだけど、今回は初めてメロディーとして完成させた感がある。

オリ:本当にこの曲のコード進行は厄介なんだよ(笑)。この曲を最後にした事で、アルバム全体が完結してる印象を受けるし、また最初から聴こうって気分になるんじゃないかと思うな。